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家族信託を行う前の基礎知識

 世界で唯一国連が定義する超高齢社会の日本、近年、高齢者問題として社会保障の問題のみならず、財産管理上の問題、が老人性痴ほう症などを発症して意思能力が減退した場合や、喪失した場合にどのように適切に管理を行うのかといった問題が多く出てくるようになりました。死亡後、財産をどう分配するのか、処分するのかなどの問題も多く出てきました。  そこで、近年、新しい財産の維持管理の仕組みとして家族信託が注目されています。この記事では家族信託について簡単に説明いたします。

家族信託を行う前の基礎知識

家族信託とはどういったものか

 家族信託とは、信託財産が本人の財産ではなくなるといった特徴があります。そもそも信託制度とは、trustに基づき、第三者に自己の財産権の所有とその利益の受益とで分離して管理する手法です。原初は封建社会であった、欧米諸国において、国王や領主からの遺産相続に関する徴税などを免れるために編み出されたと言われています。  信託とは、このように自己の財産から、信託財産を分離することで、相続財産からも分離することとなります。また、家族信託とは、その財産の管理処分権を家族に委託することにより、冒頭のような将来的に、自分の意思能力が減退したり、喪失するような場合があったとしても、適切な管理を受託者である家族が担うことができます。

家族信託の方法

 家族信託の方法は非常にシンプルです。その方法とは、委託者でと受託者である家族との間で信託契約が結ぶことです。ときおり耳にするのは、家族信託で「公正証書にする必要がある」といった話がありますが、信託法上、公正証書が義務付けられている形態もありますが、家族信託において原則として公正証書にする必要はありません(信託法4条1号)。  公正証書にした方がよいというのは、公証人という公的な立場の方に信託内容や信託意思の確認において、一定の公証をしてもらうことにより、その信託契約の成立を担保するといった意味があります。また、公正証書にした場合には、その記録が公証人役場に残るためあとから、その内容について争いになった場合に、確認することができるといった利点があります。

信託契約の有効性

 家族信託の方法は、「信託契約を行うのみ」と前項で説明しましたが、どんな内容でも信託契約が有効かというとそうではありません。  例えば、その内容として最も重要と言えるのが、「受益者が保護される信託契約の内容であるか」といった点です。  信託契約の性質上、信託の内容は委託者の財産を適正に管理することを目的とするため、例えば、受託者の恣意的な条項が含まれた信託契約は、信託としての実質を有さず、その効力が否定される可能性が高くなります。  また、この他の要件は下記のとおりとなります。

・委託者から特定の信託財産が受託者に名目上も、実質上も移転し、所定の手続きが必要な場合はその手続きは完了しているのこと ・受託者の管理権は信託の目的を達成するために排他的に信託事務を行うものであること ・受益者の権利が保護され、受益者と受託者の信頼関係が十分に保たれていること

上記の3点となります。

家族信託のメリットとは

 家族信託のメリットは、成年後見制度等の従来の後見制度よりも柔軟性に富む点と、相続における遺言機能の補完、及び財産承継の円滑化などが挙げられます。  法律上、信託財産となった委託者の財産は、その者の固有財産ではなくなります。そのため、税法上は別として、民法上は、委託者が死亡時に信託財産は遺産分割の対象とはなりません。  他のメリットとしては、委託者が十分に意思能力のある段階で、その信頼に基づき、将来的に意思能力を喪失することがあっても、有効であり続けますし、成年後見のように、その財産管理に逐一、家庭裁判所の関与・報告が必要となるといった制度上の利用しにくさがありません。  成年後見制度においては、財産管理に関する報告の義務があり、また、重要な財産の処分には、裁判所の許可が必要となります。  例えば、事例としては、古くなった実家の建替えや、バリアフリー化の為の費用の算段のための銀行からの借入の際、担保権の設定といった重要な財産処分行為にあたるため、裁判所で許可を得る手続が必要となり、非常に手続面で煩雑となっています。

家族信託と公正証書遺言

 2019年1月より、遺言書に関する法律制度が変更されましたが、なおも、相続において争いを減らすには公正証書遺言が適正だと、一般的には言われています。  しかし、公正証書遺言そのものの有効性を争われるケースは少なくはありません。その理由としては、公正証書遺言は、遺言者の遺言能力までを完璧に担保しているとはいえないからです。面前で確認すると言っても限界がありますから。この点、信託契約にも同様の危険がともないますが、公証人役場において信託契約の公証をえれば、実質的には公正証書遺言と同レベルの成立面での有効性があります。

まとめ

 このように、家族信託にはメリットがありますが、前記でも述べたとおり、その信託内容の構成には一定の注意が必要です。また、適切に信託財産を管理するためにも、法的な専門家による第三者的な監視も必要であり、こういった点から、すべてを家族のみで完結させようとせずに、弁護士などの専門家を交えて、信託内容の意義や家族の将来像も含めた相談を行った上で、家族信託を結ぶのが適切でしょう。